2014/07/22

お化けを恐れるアダルトチルドレン ~ 「誰か」を読んで(宮部みゆき)

しばらく前に読了していました。
今は杉村三郎シリーズ第二作「名もなき毒」を読んでいます。

「誰か」ストーリーについて

自転車によるひき逃げ犯探しを軸にして,ストーリーが展開します。
この部分だけみると現代的な社会問題を扱っているように感じますが,複数の人間模様が複雑に絡まり合いながら,物語は結末へと収束していきます。
謎解き要素が薄く,ミステリーらしさは影を潜めていますが,宮部みゆき作品らしい展開と言えるでしょう。
子供はすべての暗闇にお化けの形を見いだす。 (81ページ)
これが最後まで意味を持つキーワードです。
わたしも,子どもの頃に似たような経験があります。
布団の中から天井を見上げていると,天井の模様が人の目のように見えて薄気味悪く感じました。
夜中のトイレに起きて,トイレから布団に戻るまでの暗闇が怖く感じました。
お風呂場で目を閉じてシャンプーをしたあと,目を開けると目の前に知らない人がいたら……と恐ろしく感じました。

子どもなんて,そんな程度のことを真剣に怖がるものですよね (笑)

アダルトチルドレンの心の中にいる本物のお化け

このブログを読んでいる方は,「お化けなんてないさ,お化けなんて嘘さ」と明るく歌い飛ばす歌をご存じですか?
お化けなんていないから安心しなさい……とでも言いたいのでしょう。
それは正しい反応でしょうが,ある意味で正しくない反応です。
まれに本物のお化けが紛れ込んでいることがあるからです。

えっと。。。
「本物のお化け」と言っても,スピリチュアル的な意味ではありませんよ (笑)

子どもは「本質的に見たくないもの」を見たとき,あたかも「それが存在していないかのように」振る舞うことがあります。
実際には見ているのですが,心の奥深いところに,そっとしまい込んでしまうのです。
心理学的に言うところの「トラウマ」も,そのひとつでしょう。
それが沈殿して固まることで,子どもの心の中に「本物のお化け」が形成されます。
次第に「お化けなんていない」と思い込み,お化けがいないように振る舞うようになります。
やがて子どもが無意識下で自分自身についた嘘を,事実であるかのように自分に信じ込ませることに成功します。
お化けから目を背け続ける方が,現実というお化けを直視するより楽だからです。

しかし「本物のお化け」は消えた訳ではありません。
ふとした瞬間に飛び出して子どもを怖がらせては,すぐに姿を隠すのです。

「アダルト・チルドレン(AC)」という言葉をお聴きになったことはありますか?
1990年代後半くらいだったと記憶していますが,クリントン元大統領がカミングアウトして,聞かれるようになった言葉です。
かつては「アルコホリック・チルドレン(Alcoholic Children)」と呼ばれていました。
本来の意味は「アルコール依存症の親元で育った子どもたちが抱えるトラウマ」に対する総称です。
次第に意味合いが変化し,子ども時代を子どもらしく過ごせず,心の傷を抱えながら子ども時代を過ごした「Adult Children」と呼ばれるようになりました。
言い換えるなら「子ども時代を経験せずに大人なってしまった,元・子どもたちが抱えるトラウマ」です。
DVを目の当たりにしながら育った子どもたち,ネグレクト(育児放棄)や虐待を経験した子どもたち,過度の期待を背負わされることで大人びた環境下で育った子どもたちが,潜在的に抱えているトラウマだと言われています。

†††

わたしの持論です。
不幸にもアダルトチルドレンとして育った子どもたちは,心の一部が未熟なまま成長してしまった,アンバランスな心の持ち主です。
自身が「お化け」であるかのような錯覚に陥ることもあるのでしょう。
生涯にわたって「お化け」を解放することはできないのでしょう。
それでも共存していくことは可能です。
自分の中の「お化け」を直視することによってです。

朝,起きた後,鏡を覗くことに似ているかもしれません。
顔を洗って綺麗にし,寝癖が残っていれば整えます。
「寝癖なんてないさ,寝癖なんて嘘さ」と歌い飛ばす訳にはいかないのです (笑)
心をバランス良く再成長させるためにも,ありのままの自分の姿を受け入れる必要があります。
きっとイヤな作業のくり返しで,血を吐くような努力を重ねる必要があるでしょうね。


この本を読んで思い出した内容をつらつらと書いてみたのですが,話が脱線してしまったような気がします。
ここまで書いておいてアレですが,「(精神的に)痛いストーリー」が苦手な方にはお勧めできないかもしれません。


  
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